経鼻胃内視鏡(鼻カメラ)
経鼻胃内視鏡(鼻カメラ)とは
もう胃カメラは怖くない
口からのむ従来の胃カメラ検査で、大変辛い思いをされた方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか?「もう二度とカメラはのまない!!」と捨て台詞を吐いて病院を後にされる患者さんも、中にはいらっしゃいます。でも、検査をする方も、これはこれで大変なのです。「オエ~」「ゲッ~」と苦しそうにされているのを横目に、冷静に検査を進めていくということは、そうそう出来るものではありません。早く検査を終了したいが、見落としは避けたい。こちらも汗だくです。
これを少しでも解消したいとの思いから登場したのが経鼻胃内視鏡(鼻カメラ)です。すなわち、検査を受ける方とする方の両方から歓迎される検査方法といえます。
スコープの直径は5.9mm
では、具体的な検査方法についてご説明いたします。内視鏡ですが、スコープの直径が5.9mmと、従来の8~10mmと較べてかなり細くなっています。しかも、柔軟性があるために、鼻腔内に入れても硬いものが入っているという異物感をあまり感じません。百聞は一見にしかずです。従来の内視鏡を見慣れた方ならこの内視鏡を見たとき、かなり細くなったという印象を持たれると思います。この印象は大切です。“これなら大丈夫!!”と、気持ちに余裕が生まれるだけでも、楽に検査が終われそうな気がしてくるから不思議です。
図1が口から内視鏡を挿入した場合と、鼻から挿入した場合とを比較したシェーマです。
スコープが舌の根元(舌根)に触れることで、咽頭反射(嘔吐感)が起こりますので、鼻から挿入することでこの問題が解決します。
検査の流れ
まず、最初に行うのが鼻の麻酔です。各施設で麻酔方法は異なりますが、これはまだ確立された方法がないからです。当院では他施設で行われているのを参考に、さらに工夫を加えて行っています。
- ジャクソン氏噴霧器を用いて、鼻腔内の麻酔を行います(図2)。
少し時間を空けて、2回行います。 - いよいよ鼻から挿入です(図3)。
- 中鼻甲介を目標に先端を進めていきます(図4)。
- さらにスコープの先端を進めていくと、鼻中隔、下鼻甲介に囲まれた三角形の隙間が見えてきます(図5)。
- この間を通っていくと、やがて上咽頭という部位に達します(図6)。
- そしてもう少し進めると、口頭蓋という部分が見えてきます(図7)。
- 矢印の部分が食道の入口部です(図8)。
- 食道内にゆっくりとスコープを進めます(図9)。
- 胃の中を観察しています(図10)。
- 胃の幽門輪で、この奥が十二指腸です(図11)。
- 十二指腸内部です。十二指腸潰瘍が多発性に認められ、粘膜も赤く肥厚しています(図12)。
経鼻内視鏡検査(経鼻胃カメラ・鼻カメラ)に関するQ&A
1.鼻カメラは検査が楽だと聞いているのですが…
「鼻カメラ」=「楽な検査」というのは少々言いすぎかなと思います。誤解ないようにお話ししますと、口からスコープを飲み込むと、どうしてもスコープで舌根部が刺激され咽頭反射(嘔吐感)が起こってしまいます。この反射が極端に強い人は、胃カメラは苦しくて辛い検査だ、二度と受けたくないということになってしまいます。
ところが鼻カメラはスコープが舌根部に当たりませんので、この反射が起きません。したがって、その分苦痛は軽減されるということになります。
では、他に辛いことはないのか?という点に関してですが、細いとはいえ鼻から挿入されますので、人によっては鼻に違和感や異物感、あるいは多少の痛みを感じる方もいらっしゃいます(もちろん鼻腔内の麻酔は行います)。
以下の事柄は口からの胃カメラでも共通ですが、スコープを下咽頭から食道に挿入する際に嘔気や違和感を感じる方も、わずかの頻度ではありますがいらっしゃいます。特に、若い方、神経質な方に多い印象です。
また、スコープが胃の中で動いているのが不快に感じる方もいらっしゃいます。
少し否定的なことを書き過ぎましたが、出雲中央クリニックで行われた約2000人のアンケートの結果では、約93%の患者さんが次回も経鼻カメラを希望されているというデータがあります。
当院でも、以前に経口カメラを行ったことのある方で経鼻カメラ終了後にどちらが楽であったかを伺ったところ、8~9割の方が経鼻内視鏡の方が楽であったとの回答が得られています。
ただ、初めて胃カメラ検査を受けられた方で経鼻カメラの感想を聞いてみると、僅かではありますが、苦しかった、できることならもう受けたくないとの訴えもあります。ですから、胃カメラが初めてで、比較の対象がない方では鼻カメラでも苦しい、大変だと感じる方もいらっしゃるように思います。
結論を言うと、以前に口からのカメラで辛い、苦しい思いをされた方は鼻カメラでは楽と感じる可能性がかなり高く、一方、初めて鼻カメラを受けられる方は楽な検査だとあまり高をくくっていると、以外に辛いと感じられるかもしれません。
2.鼻カメラのメリットって、何ですか?
先程のクエスチョンの答えとも重複しますが、最大のメリットは嘔吐反射がかなり少なくなるので、検査中の「ゲェーッ」「オェーッ」がほとんどないことです(もちろん個人差はあります)。
次に、検査中に自由に話ができます。何か不都合なことがあれば、声で知らせることができます。もちろん、モニターに映し出される自分の胃の映像見ながら、医師にその場で質問もできます。
また、鼻への麻酔も微量であり、身体への負担が軽減されすぐに仕事に戻れます。
3.鼻の内腔が狭いと言われたことがあるのですが、検査はできますか?
片側の鼻腔が狭い場合は対側の鼻腔から、あるいは中鼻道からの挿入が難しければ総鼻道からに変更して試みますが、それでもだめなら同意を得て経口アプローチに切り替えます。
抵抗が強かったり、痛みを訴える、あるいは出血が見られる場合も同様に対応いたします。
4.検査終了後に鼻血が出てきた場合にはどのようにすればよいですか?
鼻出血は50例中1例程度にみられる偶発症です。検査後に鼻をかんだ際にティッシュにつく程度のものであれば、10人に1人くらいには認められるかもしれません。
検査終了直後に出血が認められた場合にはこちらで処置いたしますが、帰宅後に出血が出現した場合には、まず10分間、指で鼻先をつまみ圧迫するようにしてください。これで鼻出血が止まることがほとんどです。これで止まらないようでしたら、電話でお問い合わせいただくか、直接ご来院ください。
なお、鼻カメラ終了後は強く鼻をかまないよう注意してください。